ボーダーライン。Neo【上】
「奈々ね。檜とはセフレだったの」

 ーー……え?


 一瞬。何を言われたのか分からず、意味を理解するまでに数秒かかる。

 上ずった声で、今なんて? と聞き返すのがやっとだった。

「セフレだよ? えっち有りの友達関係」

 彼女はキョトンとし、当たり前のように言った。

 水城さんと秋月くん、二人が裸同士でくっついているのが頭に浮かんだ。ベッドの上で彼女に覆い被さる秋月くんを想像し、幾らか頬が熱くなる。

「あ~。先生やっぱり、引いた?」

「え? う、ううん。ちょっと。びっくりしただけ」

 動揺して声が震えそうになった。車のハンドルを再度握り直した。

 何かの間違いじゃないかと思ったが、彼女が今ここで、そんな嘘をつく理由が思い浮かばない。

「本当に、秋月くんとそんな?」

 それでも信じられなくて、水城さんに訊ねていた。彼女は首を傾げ、キョトンとした目でこっちを見る。

「先生。檜と親しいの?」

「え?? あ、いや。そういう訳じゃ無くて。そのっ、あの子って陽気な感じするから。そんな酷い事出来るのかな、って。不思議に思って」

 考えながら言葉を探したので、つい饒舌になってしまう。

 水城さんは冷静な顔つきで、窓の外に目を向けた。

「本当だよ? 高一の夏ぐらいから、ずっと」
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