ボーダーライン。Neo【上】
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あの告白を受けてから、二週間が経つ。
二学期が始まってからのあたしは、旅行など無かったかのように振る舞い、秋月くんの前でも、教師の仮面をかぶり続けた。
「何、やってるんだろ。あたし。こんなの渡せる訳ないのに」
あたしはマンションの自室で座り込んだまま、小さく呟いた。手には一枚の写真。ロンドン旅行の、美術館前で撮ったものだ。
それを見詰めたまま、隣りで笑う秋月くんを指でなぞり、キュッと唇を結んだ。
突如鳴り響く、携帯の着メロにハッと目を上げる。
ガラステーブルの上に置いたそれが、音楽と共に振動している。電話だと分かった。
「もしもし?」
通話を始めると、彼を見つめていた事が急に恥ずかしくなり、手にした写真をテーブルの上に置いた。
『あ。もしもし、サチ~?』
「うん。どーしたの?」
声の主は美波だ。彼女の明るい口調に自然とえくぼが出来る。
『あたし、今日あの子とデートしちゃった!』
ーーデート?
「あの子って?」
『檜くん』
その名に一瞬、表情が固まった。
「そう、なんだ?」
動揺が声にあらわれそうになる。
『うん。学校帰りみたいだったけど、拉致っちゃった』
「ふぅん」
声の様子から美波の屈託無い笑顔が浮かんだ。
あの告白を受けてから、二週間が経つ。
二学期が始まってからのあたしは、旅行など無かったかのように振る舞い、秋月くんの前でも、教師の仮面をかぶり続けた。
「何、やってるんだろ。あたし。こんなの渡せる訳ないのに」
あたしはマンションの自室で座り込んだまま、小さく呟いた。手には一枚の写真。ロンドン旅行の、美術館前で撮ったものだ。
それを見詰めたまま、隣りで笑う秋月くんを指でなぞり、キュッと唇を結んだ。
突如鳴り響く、携帯の着メロにハッと目を上げる。
ガラステーブルの上に置いたそれが、音楽と共に振動している。電話だと分かった。
「もしもし?」
通話を始めると、彼を見つめていた事が急に恥ずかしくなり、手にした写真をテーブルの上に置いた。
『あ。もしもし、サチ~?』
「うん。どーしたの?」
声の主は美波だ。彼女の明るい口調に自然とえくぼが出来る。
『あたし、今日あの子とデートしちゃった!』
ーーデート?
「あの子って?」
『檜くん』
その名に一瞬、表情が固まった。
「そう、なんだ?」
動揺が声にあらわれそうになる。
『うん。学校帰りみたいだったけど、拉致っちゃった』
「ふぅん」
声の様子から美波の屈託無い笑顔が浮かんだ。