ボーダーライン。Neo【上】
 心中は複雑で、少しの間無言になる。

 秋月くんから告白された事は誰にも話していなかった。空港で一緒だった美波にさえ、何でもないと言って、笑って誤魔化した。

 その彼を話題に出され、何と言っていいか分からず、ただ沈黙してしまった。

 いっそのこと、秋月くんに恋していると言えれば良いのだが、何となく笑われる気がして口を噤んだ。

『サチ?』

 受話器の向こうで訝しむ声。

「ねぇ、美波」

『ん?』

「あたしって。いつも同じ様な人を好きになる」

 優しくて、明るくて、目立ってて、カッコよくて、デリカシーなんて全く理解出来ない男の子。

 美波が一拍、無言になった。

『何それ。今誰か、気になってる人がいるの?』

「え、あ、ううん? そういう訳じゃ無いんだけど。圭介と別れてから、何かそんな風に思っちゃって」

 何言ってるんだろう、と思わず早口になる。

『サチってさ。いっつも事後報告だよね?』

「え」

『親友なんだからさ。ちょっとは相談して欲しいな』

 携帯を持つ手にグッと力がこもった。

 ーーもしかして、美波。既に知ってるんじゃ?

「美波。秋月くんから、何か聞いた?」

 言いながらチラリと写真の彼に目を向ける。

『何かって?』

 質問に質問で返され、カッと頬が熱くなる。
< 157 / 269 >

この作品をシェア

pagetop