ボーダーライン。Neo【上】
早く帰って、秋月くんに電話をかけないといけないのに、と心ここにあらずで田崎先生の話に相槌を打っていると、急に携帯が鳴り始めた。まだマナーモードから切り替えていないので、バイブレーションが響いている。
これぞ天の助け、会話を切り上げるチャンスだと思い、あたしは肩から提げた鞄を下ろした。
「あ。ごめんなさい、電話が」
ーー多分、美波だ。また飲みの誘いだったらどうしようかな。
「あ、どぞどぞ? 出て下さい。それじゃあ、僕はお先に」
「あ、はい。お疲れ様です」
言いながら、あたしは運転席に乗り込む田崎先生へ、ぺこりと頭を下げた。
そして携帯を確認する。相手は尚もしつこくコールを鳴らしていたので、とりあえず出ようと思った。
しかしながら、液晶に浮かんだ名前を見て、躊躇ってしまう。
ーー秋月くん……? どうしよう。
電話をしようと思っていた相手なだけに、戸惑った。まさか学校の駐車場で、断りの返事をする訳にもいかない。田崎先生の車だってまだあるし……。
そう思いながらも未だにコールが続くので、思い切って画面をスライドした。
「も、もしもし?」
電話の向こうはどうなっているのか、秋月くんは何も言わず、沈黙が満ちていた。
やがて車のエンジン音が聞こえ、田崎先生が駐車場を出て行った。
これぞ天の助け、会話を切り上げるチャンスだと思い、あたしは肩から提げた鞄を下ろした。
「あ。ごめんなさい、電話が」
ーー多分、美波だ。また飲みの誘いだったらどうしようかな。
「あ、どぞどぞ? 出て下さい。それじゃあ、僕はお先に」
「あ、はい。お疲れ様です」
言いながら、あたしは運転席に乗り込む田崎先生へ、ぺこりと頭を下げた。
そして携帯を確認する。相手は尚もしつこくコールを鳴らしていたので、とりあえず出ようと思った。
しかしながら、液晶に浮かんだ名前を見て、躊躇ってしまう。
ーー秋月くん……? どうしよう。
電話をしようと思っていた相手なだけに、戸惑った。まさか学校の駐車場で、断りの返事をする訳にもいかない。田崎先生の車だってまだあるし……。
そう思いながらも未だにコールが続くので、思い切って画面をスライドした。
「も、もしもし?」
電話の向こうはどうなっているのか、秋月くんは何も言わず、沈黙が満ちていた。
やがて車のエンジン音が聞こえ、田崎先生が駐車場を出て行った。