ボーダーライン。Neo【上】
「だから。ごめんなさい」

 やっとそこまで言って、俯いてしまった。

 上から秋月くんの溜め息が降ってくる。

「分かった。……とりあえずは、それで受け止める」

「とりあえず?」

 予想外の返答に、あたしは顔を上げた。

「うん。まだ諦めらんないからさ。先生が自分の立場とか、俺が生徒だとか。もしそういうの気にしてるんなら卒業してからまた告うし」

 ーーうそ。そんなふうに言われるなんて、思ってなかった。

 あたしは複雑な気持ちで眉を下げた。

 秋月くんに想って貰えて嬉しい。けど同時に、自らの立場を守るために嘘をついているのが申し訳ない。

 秋月くんに悪いと思っていても、それを伝える事も出来ない。

 あたしはキュッと唇を噛んだ。

「それとも。俺の気持ち、迷惑? ウザい?」

「そんな。迷惑だなんて」

 ーー絶対ない!

「じゃあ。嬉しい?」

「え」

 若干、戸惑うが。今となっては嬉しいと伝えるぐらいは良いだろう、と思い直した。

 恥ずかしさに頬を熱くしながらコクンと頷いた。

「そっか、良かった!」

 秋月くんが嬉しそうに、顔をほころばせて笑った。その笑顔が見れて、あたしの鼓動は早鐘のように鳴った。

 気を抜いたら、好きだと伝えそうになる。
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