ボーダーライン。Neo【上】
 ーーどうしよう、嫌われちゃうっ!

「ご、ごめんっ! あたしっ」

 彼に嫌われる行動を散々とっておいてなんだが、あたしは慌てて立ち上がった。

 その途端、ぐらんと天地が舞った。

「え?! ちょっ!?」

 ベッドの上で足がよろめき、危うく転倒しかかった。

 気付くと、ベッドの上から秋月くんに抱きつくような体勢をとっていて、柔軟剤の香りがふわっと鼻腔をくすぐった。ゆっくりと上体を起こされ、彼と距離を開けた。

 ベッドひとつ分の高さがあるので、目線はほぼ同じで。すぐ近くに彼の唇があった。

 カァッと頬が熱くなり、思わず俯いてしまう。

「はぁ。大丈夫?」

 丁度、腰の辺りに彼の手があり、心音はこれでもかというほど鳴り響いていた。縮こまって、コクコクと頷いた。

「じゃあ、俺は帰るから。ちゃんと鍵しめてね?」

「あ、秋月くんっ」

 回れ右で玄関に向かう彼を、声だけで追いかけた。

 ん? と言って、秋月くんが振り返る。

「あの。ありがとう……」

 本当は。酷い態度をとってごめんなさい、と謝らなければいけないのに、うまく言葉が続かない。

 あたしは泣きそうになりながらも、無理やり口角を吊り上げた。

「それから。いきなり、ごめんなさい」

「……いや」

 秋月くんは若干困ったように、首を傾げた。そして、真っ直ぐにあたしを見つめた。
< 190 / 269 >

この作品をシェア

pagetop