ボーダーライン。Neo【上】
 職員室から鞄を取って来ると、急いで職員用玄関に向かった。丁度その時、昇降口へと降りて来たカイくんと鉢合わせる。

「あ、先生」

「か、カイくん」

 声をかけられ、少し驚いたが、ジッと彼を見据えて言った。

「カイくん、あたしに嘘ついてたでしょ?」

「え?」

「秋月くん、学校サボって工事現場で働いてるんだって?」

 カイくんは、あっ、と息を飲んだ。顔を曇らせ無言になる彼を見て、やっぱり図星なんだ、と息を吐く。そのままくるりと踵を返した。

「え、先生。どこ」

「確認しに行くの」

 靴箱から外靴を出し、足を入れると、先生、とカイくんに呼び止められた。

「ヒノキが好きなの、フォンタグレープ」

「え?」

 ーーそれってジュースの……?

 カイくんはニッと笑みを浮かべ、何も言わずに立ち去った。





「本当に働いてる」

 ーー学校を休んでまで。

「何で?」

 物陰からひっそりとその姿を眺め、あたしは力無く呟いた。

 けたたましく響く騒音の中。ヘルメットに作業着姿の秋月くんを見て、溜まらずに唇を噛んだ。

 近くの作業員に怒鳴られながらも、セメント袋を担ぎ直している。

 数日ぶりに見る彼に、胸が熱くなった。
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