ボーダーライン。Neo【上】
 とりあえず、バイトは禁止だから辞めさせなければいけない。そう分かっているものの、声を掛ける気にはなれなかった。

 高校生に、あんな現場仕事は体力的にかなりキツいはずだ。けれど、それを承知の上で彼は働いている。

 ーーそうまでして、欲しい物があるのかな。

 あたしは握り締めた拳で、グッと胸を押さえた。

 学校を休んでまで、急いで稼がなきゃいけない理由が。秋月くんには有るのだろう。

「あれ? なに、あんた。うちになんか用??」

「え?! あ、いえっ、すみませんっ」

 出入りする作業員の一人に突然声を掛けられ、慌てて答える。じろりと見られるのが気まずくて、あたしはその場を立ち去った。

 しかし数分後。コンビニの袋を片手に、同じ場所へと戻って来ていた。中身はカイくんに教えて貰ったジュース一本。

「あの、すみません」

 近くにいた作業員の男性に声を掛け、手に持っていたそれを渡して貰えるよう、お願いした。ぺこりと頭を下げ、再び踵を返す。

 ーー見逃すのなんて、わけ無い。あたしは担任だから。

 後ろ髪を引かれる思いで振り返り、また背を向けて歩き出した。
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