ボーダーライン。Neo【上】
「……はぁ。マジだせぇって」

 恥ずかしいのと、自分の情け無さを悔いているように見えたが、その姿はあたしの心を激しく揺り動かした。

 どんな秋月くんも大好きで、彼の全てが愛おしかった。感情が高ぶると、目頭が熱くなった。

「もう、やだよっ」

「え?」

 顔を上げた秋月くんと目が合い、あたしは口をへの字に曲げた。やがてポロポロと涙の粒が零れ落ちた。

 突然泣き出すあたしを見て、彼は当然ながらギョッとし、狼狽えた。

「え? え、先生?? なに、何でっ??」

 彼はどうするべきかを考え、あたしの肩におずおずと触れた。原因も方法も見つからないと頭を抱えている。

「もうやだよっ、我慢するのっ」

「え? な、何が??」

 もう限界だ。そう思った。

 好きな人がこんなに近くにいるのに、いつまでも気持ちを押し殺して、教師ぶる事なんて出来ない。

「先生、もしかしてまた」

 秋月くんが言い終わる前に、あたしは彼の腕の中へ飛び込んだ。

 コートの生地をしっかりと掴み、彼の背へ腕を回した。

「え?」

 上から呟きが降ってくる。

 秋月くんの心音は、急にバクバクと脈を早めた。
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