ボーダーライン。Neo【上】
「え?! ちょっ、秋月く」

「マスター、すいません。すぐ戻りますんで!」

 バーテンの秋月くんに手を引かれ、あたしは外へと連れ出された。

 店の扉を開けて直ぐの、路地裏で話し合う事にした。

「どういう事? あなた達、ここでバイトしてるの?」

「えっと、まぁ。そんなとこ?」

 悪びれる様子もなく、首を傾げる彼に、もはや呆れるしかない。

「そ。バイトしてるのね、じゃあ今日で辞めて貰うから。いいわね?」

「え、それはちょっと」

「なに?」

 秋月くんは、真剣な顔をしたかと思えば、思い切って頭を下げた。大きく柏手を作った‘お願いのポーズ’だ。

「先生、お願い! 見逃して??」

 ーーと言われても。

 あたしは小さく嘆息した。

「だめ。規則は規則だから」

 顔を上げた彼の目が物語る。何で? と。

 お願いひとつで許して貰えると思っていたのだろう。世の中そんなに甘くない事をお姉さん目線で教えてあげたい。

 ーーやっぱりこういう所がまだ高校生なのね。

 あたしはまた溜め息をついた。

「それにあなた達。桃林の生徒って、いつから大学生になったの? 三つもサバ読んで」

「正確には四つね。俺、誕生日まだだから」

「そんな事はどうでもいいの。あたしが言う前に、自分からバイト。辞めれるわね?」

 あたしは腕を組んだまま、秋月くんの返事を待った。
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