キミの世界で一番嫌いな人。
「きっと俺が女みたいだからです…!小柄だからしょっちゅう妹と間違えられるんです!」
ちがう、そうじゃない。
裏で誰が糸を引いてるんだって聞いてんだよ。
……有沢 夏実。
考えられるとすれば、あいつだ。
あいつが絡むようになってからおかしい。
そもそも貼り紙の文字は女の字だった。
「俺、頑張るよアッキー!少しずつだけど毎日腹筋と腕立て30回はしてるんだっ!」
「…30回で付くわけないだろ」
「えっ、そうなの!?じゃあ50回?100回…!?」
「もうしなくていいって。お前は…そういうのはしなくていいんだよ」
体育館倉庫でスクールバッグを漁られたらしいそいつは、回収しに俺たちの前から消えた。
本当はそこで襲われかけたけど、こいつなりに逃げてステージ裏に移動したんだろう。
ステージ裏なんて体育館倉庫より人が来なければ声も通らない。
…むしろ危険になってんだろ馬鹿。
「藤城サン。俺、あんたには負けないよ」
ぼそっと、独り言にも聞こえるはずなのに俺の耳にしっかりと残った。
鋭い眼差しは俺を殺そうとしているものに見えて、実際はそうではなくも感じる。
「チビー?荷物あったー?」
「アッキー悲報!俺のお弁当ぐっちゃぐちゃ!」
「…それ朗報。俺の分けてあげるから一緒に食べよ」
それでもまっすぐ走って行ける廣瀬が。
どうしようもなく羨ましかった。