キミの世界で一番嫌いな人。




「きっと俺が女みたいだからです…!小柄だからしょっちゅう妹と間違えられるんです!」



ちがう、そうじゃない。

裏で誰が糸を引いてるんだって聞いてんだよ。


……有沢 夏実。


考えられるとすれば、あいつだ。
あいつが絡むようになってからおかしい。

そもそも貼り紙の文字は女の字だった。



「俺、頑張るよアッキー!少しずつだけど毎日腹筋と腕立て30回はしてるんだっ!」


「…30回で付くわけないだろ」


「えっ、そうなの!?じゃあ50回?100回…!?」


「もうしなくていいって。お前は…そういうのはしなくていいんだよ」



体育館倉庫でスクールバッグを漁られたらしいそいつは、回収しに俺たちの前から消えた。

本当はそこで襲われかけたけど、こいつなりに逃げてステージ裏に移動したんだろう。


ステージ裏なんて体育館倉庫より人が来なければ声も通らない。

…むしろ危険になってんだろ馬鹿。



「藤城サン。俺、あんたには負けないよ」



ぼそっと、独り言にも聞こえるはずなのに俺の耳にしっかりと残った。

鋭い眼差しは俺を殺そうとしているものに見えて、実際はそうではなくも感じる。



「チビー?荷物あったー?」


「アッキー悲報!俺のお弁当ぐっちゃぐちゃ!」


「…それ朗報。俺の分けてあげるから一緒に食べよ」



それでもまっすぐ走って行ける廣瀬が。

どうしようもなく羨ましかった。



< 196 / 340 >

この作品をシェア

pagetop