九羊の一毛
耳を執拗に食んでくる彼の胸を押し返し、懸命に声を上げる。
玄くんはそれに応じるように体を離すと、今度は私の唇を奪って囁いた。
「うん、しないよ。今日は最後までしない……ちょっと練習するだけ」
「練習……?」
「そ、練習。羊ちゃんがちゃんと俺と一緒になれるように、準備しなきゃいけないから」
準備なんてしなきゃいけないんだ!?
もしかして結構手間がかかるんだろうか。私は漠然と卒業してから、と言い続けていたけれど、今からしっかり準備しておかなければならないとは。
「そ、そっか……ごめんね、知らなかった……」
「んーん、いいよ。全部俺がやるから。羊ちゃんは俺のことだけ考えてて?」
そのセリフに思わず顔が熱くなる。だめだめ、玄くんは真剣に言っているんだから。
任せきりでいいんだろうか、と不安になったけれど、正直自分が力になれそうなことは何一つ思いつかない。大人しく彼に委託することにして、私は黙って首を縦に振った。
「ん、いい子……」
優しいキスが降ってくる。彼の指が背中を下から上に撫で上げて、肩が跳ねた。
「大丈夫、何も怖くないからね……気持ちいいことしかしない……」