AIが決めた恋
「あんた、小説なんて書いて何になるの?」

母が僕を睨んでいる。

「これは、ただの趣味だよ。」
「は?趣味なら、何で本まで作ってんの?」
「担任の先生が、本にしてみたらどうかと提案してくれたんだ。だから──」
「あんたみたいな頭も悪けりゃ語彙力も無い無能が書いた作品を本にして何になるって言うの?笑わせないでよ。先生も全然見る目が無くて可哀想。」

僕は(こぶし)を握りしめて、母の暴言にひたすら耐える。言われっぱなしは辛いが、言い返したところで、母が引き下がった試しは無い。ただ、耐えればいい。話を右から左へと流して、ロボットのように、突っ立っていればいい。
大丈夫。こんなの、とうの昔に慣れている。

「まさか将来、小説家にでもなるつもり?」
「……。」
「感じ悪!返事くらいしなさいよ!」

返事をしたらしたで、また何か嫌味を言われる。しかし、しなかったらしなかったで、怒られる。僕に逃げ場はない。でも、そんな時は、ひたすら自分の心を無にしていれば良い。

「小説家になんてなれるわけ──」
「それ以上はやめろ。」

父が低い声で、母の言葉を遮った。
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