新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「書類の漏れ? OK、ファイルに入れておくね」

 私は封筒を受け取ろうと手を伸ばした。

「違う。小遣いだ」
「えっ? 小遣い……? いいよ、お給料だってほとんど使っていないからあるし」
「向こうは物価が高いだろう。有名な化粧品や、服の一着でも買いなさい」
「おじいちゃん、私はそんなものに興味はないの。いらないよ」
「いいから受け取れ」

 おじいちゃんは強引に私の手に白い封筒を握らせると、「気をつけて行ってこい」と言って玄関から出ていった。

 いいのに……。

 私は白い封筒を見つめてから、仕方なくボディバッグに入れた。


 チャーター便が用意され、ストールと呼ばれる馬用のコンテナが慎重に積み込まれる。そこに雪丸がいるけれど、私はあえて顔を見せない。

私の顔を見れば外に出られると期待させてしまうかもしれないから。狭いストールの中で雪丸にはストレスがたまると予想される。
 
ストールの内部には食事や水が用意され、厩舎の馬房と同じように過ごせる状態にある。けれど運動はできないし空を移動するので、なんらかの体調の変化が心配ではあった。

競走馬によっては、一回のフライトで体重が十キロも減ってしまうこともあるとおじいちゃんが言っていた。

 修学旅行で国内線には乗ったことがあるから、機内がどういうものなのかはわかっていたが、このチャーター機には驚かされた。

 チャーター機の中には十席の豪華な椅子。座り心地がよくて、家のリビングにある古いソファとは雲泥の差だ。

 ドアで仕切られている後方にストールが収められており、雪丸がいる。

 すごいな。こんなチャーター機を用意する馬主はどんな人なの?

 ニースの牧場はかなり広大だと聞いている。雪丸はそこで体力を回復し、別の調教場に移動して競走馬となる訓練を受ける予定だ。

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