新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
 髪をひとつに結んでいた黒ゴムを、寝る前に取っていたせいだ。手櫛で髪をまとめて、左手首にはめていた黒ゴムで結ぶ。

「そういえば、キャビンアテンダントのお姉さん、寝たの?っていうくらい昨晩と変わらなくて乱れひとつなかったな」

 ビシッと夜会巻きにされた髪を思い出して、独り言ちた。


 フランスの南、ニースのコート・ダジュール空港にチャーター機が着陸したのは早朝。

 航空会社の旅客機のエコノミークラスで長時間過ごすのではなく、チャーター機で悠々とファーストクラスのような待遇で来られたのは、すごいことなんじゃないかと思う。

 馬主の経済力は半端ないな。

 手続きに時間を要し、入国審査を終えて空港の外へ出た。日本よりも暖かくて、綿の格子柄のシャツを脱ぎ、腰に巻く。

 白いTシャツとデニム姿になって、辺りをキョロキョロ見回した。

 空港を出たところで待つようにと指示を受けている。初めての海外にも気後れせず、迎えを待っている間近くをうろつきたくなった。

「空気まで違う……」

 異国の雰囲気に私は魅了されつつあった。

 パリから離れているニースは、日本人観光客は少なさそうだ。まだアジア人を数組しか見ていない。

 早く雪丸に会いたいな。

 雪丸は別の輸送トラックに乗せられて牧場へ向かい、私も迎えの車で後を追う予定になっている。
 
 キャリーケースをまたいで座り迎えを待っていると、黒塗りの高級車が目の前に止まり、運転席から制服を着た恰幅のいい外国人男性が出て私のところへやって来る。

「ミズ・ヒノトさん、ですか?」

 声をかけられて、キャリーケースからパッと飛び下りる。

 イントネーションがぎこちないけれど、紛れもない日本語。〝ミズ〟と〝さん〟のダブル使いがかわいくて、つい頬が緩む。

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