新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「はいっ、私が日野戸紅里です」
「わたしは、ムッシュー・ユウキにたのまれました、うんてんしゅのバルトといいます。どうぞ、のってください」

 バルトさんが後部座席のドアを開けた。

 人に車のドアを開けてもらうなんて初めてで、一瞬ポカンとしてからキャリーケースを持ち上げようとしたところをバルトさんに止められる。

「はこびますよ」
「ありがとうございます!」

 バルトさんはお礼を言う私に微笑み、キャリーケースをトランクに収めた。

 後部座席に腰を下ろしたところで、外側からバルトさんがドアを閉め、運転席へ回ってくる。

「しゅっぱつ、します」

 運転席から私の方を振り返り、ニコッと笑ったバルトさんは車を発進させた。

 もうすぐ雪丸に会える。


 コート・ダジュール空港を離れ、車は海沿いを走っている。

 牧場は海が見える場所にあると、雪丸はうれしいかも。毎日、潮の香りに慣れ親しんでいたから。

 もうそろそろ着く?

 雪丸に会いたくてソワソワしている私の目に、ヨーロッパの美しい建物が見えてきた。

 街中? ここを抜けたら牧場に行けるのかな。考えていたより牧場は空港から離れているのかもしれない。

 そう思った矢先、車が停まり、バルトさんが運転席から離れた。

 後部座席のドアが開き、困惑している私に「つきました」とバルトさんは告げる。
 
 車から下りて見えるのは、重厚な石造りの建物。

「ここはどこですか? 牧場じゃないように……」
「ミスター・ユウキが、まっています」

 当惑しっぱなしの私の問いには答えず、バルトさんはトランクからキャリーケースを出して、馬主の結城さんが待っているという場所へ案内する。

< 15 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop