新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「日野戸さんでは堅苦しいな。これから紅里と呼ぶ。俺のことは瑛斗と呼んでくれ」
「……瑛斗さん」
「いや、こっちでは下の名前に『さん』はつけない。瑛斗と呼び捨てでいい」

 組んだ脚に肘をのせた彼は、大役を果たしホッとしているのかリラックスした様子。

「でも、会って間もない人を呼び捨てになんてできないですから、私は瑛斗さんと呼ばせてもらいます」
「わかった。紅里の部屋へ案内しよう。こっちだ」

 奥へと歩を進める瑛斗さんに、私はギョッとなった。

「やっぱり私はホテルへ……奥さんに迷惑がかかりますから」

 すると彼は振り返る。

「俺に妻はいない。モナコのホテルが一泊いくらすると思っている? うちにはゲストルームが三つあるんだ。それとも、ばか高い金を払ってホテルにするか?」
「一泊、どれくらいするんですか?」
「そうだな。安いところでも二万はくだらないだろうな。滞在日数でかけたら、恐ろしいな」

 私はその金額に目をむく。

「ここに泊まらさせてもらいます」
「それが賢明だ。うちは宿泊料はなし、食事もついている。言うことなしだろう?」
「お金は払います、たくさんは無理ですが可能な分はきちんと」

 出かけるときにおじいちゃんが渡してくれたお金で支払おうと思った。封筒をもらった後に中身を見たら二十万円も入っていて驚いた。

「日野戸さんからすでにいただいているから、君からはもらえない。こっちだ」

 瑛斗さんは隅にあった私のキャリーケースを持って廊下を進んでいく。

 おじいちゃんは本当に前もって計画していたんだ……。

 彼の後をついていく私の困惑をよそに、瑛斗さんはリビングを出て三つ目のドアを開けた。

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