新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
 女らしくなってほしいなんて、今まで一度も言われたことがなかったのに……。

「電話で確認してもいいが、日本は今、真夜中だ。日野戸さんは寝ているだろう」
「……結城さんはマナーの学校でも開いているんですか? なにか資格でもあるんですか?」

 私はこれ見よがしに大きなため息を漏らし、ソファにドシンと腰を下ろす。

「資格はないが、俺はヨーロッパの社交界に精通しているし、トップクラスの女性たちを見てきている。だから最終的には君を、そういったパーティーに出てもおかしくないくらいのレディにしてみせる」
「してみせるって、私の意見は聞いてくれないんですか?」

 私は両手を拳にして、怒りの矛先を結城さんに向ける。

「君のおじいさんから、くれぐれもよろしくと頼まれているからな」
「手紙だけでは納得できないわ」
「日本はここより七時間進んでいる。後で電話をかけて確認すればいい。ちなみに俺が教えるわけではなく、友人に頼んでいる。俺は忙しいからな。期間は二ヵ月」

 結城さんは長くて節のある男らしい指を二本、V(ブイ)にしてみせる。

「二ヵ月も!?」
 
 私は目を丸くしてポカンと口を開いた。

「今見たところでは二ヵ月でもかなり難しそうだが。ああ、それにいいこともあるぞ」
「それはなんですか……?」
「スノーラウンドに会いに行ける。彼の体調が整い次第、調教師に任せ、ル・マンにある施設に送るが、それまでは会える」

 雪丸に会える……。

 もう会わない方がいいと思ったけれど、やっぱり元気になって雄々しく走っているところを見たい。

「……わかりました。おじいちゃんが私を恥ずかしいと思っていたのは悲しいので、できる限り意向に沿えるように努力します」
「日野戸さんは君を恥ずかしいと思っていたわけじゃない。そんなふうに考えないでくれ」
「じゃあ、どうして……?」
「俺にもそれはわからない。だが、彼が君を愛していることは、先日の会話からでもありありとわかった。だから、日野戸さんの期待に応えてレディになるように努力するんだな」

 おじいちゃんが私を女らしくさせたいと考えていたとはショックだった。牧場で生活しているのだから、男性のように動ける方がいいと思っていたから。

 私はがっくり肩を落とした。

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