新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「わかったわかった。牧場へは最寄り駅から歩けば一時間以上かかる。昨日空港へ迎えに行ったバルトの送迎で行けるようにしてある」
「え……それではあの人に迷惑がかかります。一時間くらい歩いても大丈夫です」

 私は首を左右に大きく振った。

「俺は君の身の安全を守らなければならない。日野戸さんに約束しているからね。それにバルトは俺が雇っている運転手だ、迷惑はかからないから安心しろ」
「……それではお言葉に甘えてお願いします。それで、今日は行ってもいいですか?」
「これから君にマナーや所作を教える女性が来る。その紹介が終わったら俺も一緒に行く」
「いいんですか? 用事はないんですか?」

 わざわざ付き合ってもらうのなら気が引ける。

「昨日怪我をした馬も気になっているんだ。だから君は遠慮しなくていい」
「ありがとうございます!」

 私は安堵して瑛斗さんから目の前のステーキ肉に目を落とす。

 ナイフとフォークなら家にもある。いつもと同じように食べていいのなら簡単だ。

 私はナイフとフォークを手にして、ステーキ肉を切り始める。私だって、音を立てないようにすることくらいわかっている。

 そう思いながら、全部切り分けようと手を動かす。

「ストップ!」
「は、はいっ!」

 突としてかかったストップの声に、ビクッと手を止めて顔を上げる。

「肉は食べる分だけ切るんだ。全部切ったら、温度が下がり肉が固くなる。よって食感と味も変わってくる。まあ、すでに冷めてはいるが」

 瑛斗さんは俺の真似をしてみろとでも言うように、ナイフとフォークを持ち綺麗な動きで肉を切り口へと運ぶ。

 私は切り終えている肉を口に放り込み、続いて切ってフォークに刺して食べようとした。

「急がなくていい。先に食べた肉を飲み込んでからにしろ」

 その途端、喉につっかえそうになって、急いで水を飲み胸をトントンと叩く。

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