新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「君は、芸人みたいだな」

 瑛斗さんは笑いを抑えられないといった様子で声を出して笑っている。

「いろいろ言われたから、喉につっかえたんです」

 腹を立ててプンとそっぽを向いたとき、コレットさんに連れられて華やかな女性がテラスに現れた。

「瑛斗!」

 明るいブラウンの髪のアジア人と思しき女性が、椅子から立ち上がった瑛斗さんに抱きついた。

「ずいぶん久しぶりよね?」

 母国語として日本語を話すようだ。瑛斗さんから離れた彼女はにっこり笑う。

 スラリとしたモデルのような体つきで、抱きしめたら折れそう……なんて思いながら、私はふたりの親しげなハグを眺めていた。

 ロイヤルブルーの膝丈のワンピースと同じ色のハイヒール。肩までの長さの艶やかな髪は緩く巻かれ、顔を動かすたびに耳につけたゴールドのアクセサリーが覗く。

 こんなきらびやかな女性はテレビ以外で見たことがなかった。

 芸能人みたい。

 ポケッと見ていると、ふたりが私の方を向いた。

「紅里、友人を紹介する」
「は、はい」

 慌ただしく椅子から立ち上がった途端、膝の上にあったナプキンが床に落ちた。急いで拾い、改めてふたりの前へ足を運ぶ。

「あら……」

 綺麗な女性は私を見て、呆気に取られた顔になった。

「レナ、お願いする女性だ。彼女に女性らしい所作やマナーを教えてほしい」

 瑛斗さんが私を紹介する。

「日野戸紅里です」
 
頭を下げた私に、女性はにっこり笑みを浮かべた。

「近見(ちかみ)レナよ。よろしくね」

 綺麗にネイルが施された指先を見ながら、差し出されたその華奢な手を握る。

「よろしく……お願いします」

 おじいちゃんの希望通り、女性らしさを身につけるためにここに残ることにしたけれど、その先生が桁違いの美しい女性とあって戸惑いしかない。

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