新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「聞いていなかったの? 初対面の私にひどいありさまだなって言ったのよ? 失礼だと思わない?」
「だって、紅里の髪の毛ひどいよ。そう言われるのもうなずける」
 
 ケタケタと笑い声をあげる渚だ。

「失礼な……ていうか渚だってそんなに気になるなら、走っていけばよかったのに」

 睨みながら反撃すると、背中をバシッと叩かれる。

「ばか言わないで。行けるわけないよ、私の姿を見て。ジャージよ。ジャージ」

 そういえば、渚は高校のえんじ色のジャージを着ていた。

「おしゃれなワンピースを着ていたら、突進していったのに……」
「ジャージを着ていても渚はかわいいよ。おしゃれなワンピース? いらない、いらない」

 残念そうな渚を私は明るく慰める。本当にそう思っているからだ。

 都会で着るようなおしゃれな服は、ここでは実用的じゃない。

「紅里はいらないって言うけどさ、少し考えないとお嫁にも行けないわよ。私たち二十三歳だし」
「二十三歳って、まだまだだよ。ほら、早く帰らなきゃ」
「あ、うん。じゃあまたね」

 渚は軽トラックの運転席に乗り込む。

「アスパラごちそうさまー」

 私はまだ抱えていた籠を少し持ち上げてお礼を言うと、軽トラックは「プッ」と一回小さくクラクションを鳴らして走り去っていった。



「おじいちゃん、渚がアスパラ届けてくれたの! 生でも甘いし、サッと茹でてサラダでもいいよね」

 事務所横の自宅に入り、リビングのひとり用のソファに座り書類を読んでいるおじいちゃんに声をかける。

「あ? ああ。そうだな」

 ふと我に返ったようなおじいちゃんに、首をかしげて近づく。
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