新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「もうそろそろ捜索隊を出そうと思っていたところだ」

 笑いながら言う瑛斗さんに、私は笑顔で肩をすくめてみせる。

「私のことがわかっていないですね? 私は約束を守る人間なんですよ」
「たしかに。ちょうど一時間だな」

 瑛斗さんは腕時計へ視線を落とし、笑みを漏らす。

 そこへ男性がやって来て、瑛斗さんになにかを言った。

「紅里、行こう。用意が済んだようだ」
「わぁ、うれしいです。もうおなかがペコペコで」

 歩きだした瑛斗さんが突として立ち止まり、私を見る。

「もしかして今日もランチ抜きだったのか?」
「い、いいえ。ちゃんと食べましたよ。雪丸に乗ったからです」

 レナさんに告げ口しないでよと言われたのを思い出し、声が上ずってしまう。

「そうだな。馬に乗るのも体力がいる」

 事務所の前庭には八人掛けの木のテーブルがあり、彼は私を座らせると右隣に腰を下ろした。

 ほかにもふたつ大きなテーブルがあり、牧場のスタッフが席に着いている。

 瑛斗さんは同じテーブルに座る人たちに私を紹介してくれる。その中にいた口ひげを蓄えた男性が、コレットさんのご主人クレモン・コレット氏だった。

 瑛斗さんと話をする彼は家族のように親しげだ。この牧場のみんながとてもフレンドリーで明るい。

「妻がかわいい娘さんがいると教えてくれました。なるほど、チャーミングな娘さんだ。乗馬の技術も素晴らしい」

 私がフランス語を話せないのがわかると、英語で話しかけてくれる。

 父親くらいの年齢に見えるけれど、さすが外国の人で、ウインクをされてびっくりする。そんなの初めてだ。

「クレモン、紅里が戸惑っている」
「褒められて戸惑う子なんて今まで見たことがない。いやーかわいい子だ」

 コレット氏は再度褒めて豪快に笑った。

 
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