新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
 コレットさんもご主人と踊っている。

「みんな楽しそう!」

 賑やかな一団に私は笑みを漏らすと、瑛斗さんが教えてくれる。

「このプロヴァンス地方の伝統的なダンスパーティー、〝バレチ〟だ。曲によって踊り方があるようだが、ここのみんなはいつも気ままに楽しく踊っている。君も行っておいで。ほら、誘いが来た」
「え?」

 先ほどバーベキューのコンロの前にいた若い男性がやって来て誘われる。

 ダンス経験はないけれど、あの輪に入るのも楽しそうで、私は腰を上げた。


 陽気な音楽とリズムにのって踊るのは楽しかった。ふと瑛斗さんの方へ顔を向けると、彼は隣の男性と話をしていた。

「アカリ、楽しんでいる?」

 つきっきりでダンスを教えてくれているのはリュカくんで、大人びて見えるが私より若く十九歳だった。高校を卒業して、牧場の仕事に就いたそうだ。

「ボスが気になるの?」

 彼は瑛斗さんを〝ボス〟と呼ぶ。

 今日のこの楽しい会に誘ってもらえてうれしかった。瑛斗さんも踊ればいいのに。

「もちろん! 誘おうかなと。ダンスしたら、きっともっと楽しくなるわ」

 くるりとターンさせられながら、もう一度瑛斗さんを見る。

「ボスは誰が誘っても踊らないよ。彼は僕たちとは住む世界が違う」

 住む世界か……。


 みんなは疲れ知らずで、お開きになったのはそれから二時間が経った頃だった。
 
 私は仲よくなった牧場のスタッフたちとさようならの挨拶を済ませ、瑛斗さんと迎えの車の後部座席に並んで座り、彼のアパルトマンに向かう。

「瑛斗さん、今日はありがとうございました」
「楽しかったか?」
「はいっ。とても。みなさんとてもいい人ですね」

 今晩でたくさんの人と打ち解けられた気がする。

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