新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「ダンス、なかなかやるじゃないか」
「初めての経験でしたが、おもしろかったです……瑛斗さんは踊らないんですね?」

 自分たちだけ楽しんで、彼らの雇用主の瑛斗さんはつまらない時間を過ごしたのではないかと気になっていた。

「みんなが楽しそうにダンスをしているところを見るのは好きだよ」
「そうですね。見ているだけでも十分だと思います。無理にやらされたっておもしろくないですから」
「紅里はおもしろくないことを無理にやらされるのは嫌か?」

 私の本音を探ろうとしているのか、静かな声からは真剣さが伝わってくる。

「……今は仕方ないと思っています。おじいちゃんの考えは腑に落ちないけれど」
「君は今のままでも十分素敵な女性だよ。女らしい所作が身につけば、もっと魅力的な女性になる」

 今日も土や草の上など、どこでも座っていたことを思い出し、ペロッと舌を出す。

「すみません……」
「その明るさ、素直さ、誰とでも仲よくなれる性格のよさはこれからも変わらないでいてほしい」

 瑛斗さんに褒められて、顔に熱が帯びてくる。

「い、いきなり言わないでください。照れちゃうじゃないですか」
「本当のことだ。だから今晩のように楽しんでがんばれよ」

 おじいちゃんの期待に応えるには、やるしかないのだ。女性らしくなって、おじいちゃんに喜んでもらいたい。

 私は瑛斗さんに小さく微笑み、うなずいた。

 アパルトマンに着くと、すでに時刻は二十三時を回っていた。

「瑛斗さん、今日は本当に楽しかったです。おやすみなさい」
「おやすみ。ゆっくり休んで」

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