御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
社長室がある役員フロアは最上階の五階にある。

一階はエントランスと駐車場、二階に企画、広報、営業など外部とのやりとりがメインの部門が置かれ、三階は総務や技術などの管理系。四階はショールームと会議室。

階段でツーフロア上がり、社長室を訪ねた。

「沙穂! 悪いね呼び出してしまって」

「いいけど、どうしたの?」

立派な社長専用の椅子に座っていた父がコロンと立ち上がり、こちらへ寄ってくる。
相変わらず「いいからいいから」とウインクをしながら私を手招きして廊下へ出ると、せっかく上がってきたフロアを階段でひとつ下がった。

四階の無数にある会議室のうち、三十人規模の部屋をひとつ選んだ父は、そこの扉をほんの少しだけ開く。

「ほらほら沙穂。覗いてごらん」

小声でそう急かしてくる父に促されるまま、私は扉の中を覗いた。

「ーーマネージャーの三鷹です。若者の顧客獲得ための本プロジェクトですがーー」

透さんだ!

広い室内の真ん中で、六対六で向かい合って会議が行われている。
手前側の六人は後ろ姿しか見えないけど、おそらくうちの企画部門の社員たち。
窓側は上座で話しているのは透さんで、それに続くキリッとして大人びた顔つきの男女五人は、ウォールサポートのコンサルタントさんたちだろう。
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