御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
「ありがとう」

透さんはそうつぶやくと、私の肩に優しく手を添えた。顔を近づけているのが分かる。目を開けたい、透さんを見たい。
でも恥ずかしくて無理。

「あのさ、一応聞くけど」

まだなにかあるの!? 彼はもう頬に唇がつくのではという場所で喋っている。私は目を閉じたまま「はいっ」と返事をした。

「唇にしたら怒る?」

スッと目を開けると、情熱的な瞳をした透さんが至近距離にいた。
私が一瞬黙り込んで彼を見つめたのは、透さんの声があまりにも本気だったから。

「怒るならしない。ほっぺで我慢する」

怒らないなら、唇にしてくれるの?
真っ先にそう浮かんだ自分に驚いた。透さんとそんなことしちゃいけないのに。

透さんがなにを考えているのか分からない。どうして私にそんなことするの? 美砂が好きなんでしょう?
それとも、おやすみのキスは普通なの?

「私……」

なにを迷ってるの! 断らなきゃダメ。怒りますって言わなきゃ。
指名された唇はカタカタと震え、じんわりと熱と汗が吹き出している。

涙目を透さんに向けながら、小さく「分かりません……」とつぶやいていた。

「なら、嫌だったら突き飛ばして。すぐにやめるから」

彼は今度はしっかりと両肩に手を添え、私と向き合ってくる。
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