ノイシュタット・エスケープ
「誰かを救いたいんじゃなくて、いつだって言葉は誰かに救われたがってるんだよね」
電車が知らない街について、そこで適当に飛び降りた。
向かいのお兄さんも降りて、のろのろとついてくる。
無人駅で、紙切符を箱に入れて靴を脱いだ。
駅を飛び出すと海で、砂浜で、ここはどこ、ってもう灰でぐずぐずに霞んだ肺に空色を注ぎ込む。太陽。やあ太陽。太陽。
「あたしの言葉で、あたしはあたしが救われたいの」
「誰かを救おうなんてその魂胆がおこがましいんだよ」
「言うねえオニイサン」
「でもあんたが生かした世界の人間だから、あんたが生み出した言葉しか吐けないんだよ」
いかすもころすも君次第だよ。
その感性を殺すな。その感性を疑うな。その、逃げ出したい、規律に則りたくない、自分でいたい、その感覚は自分だ。君自身だ。
「若いも大人も関係ない」
「…ない、かな」
「ないよ、二十歳未遂」
名前で呼んでくれ、と思う。
気恥ずかしさに泣いて、やっぱりあたしらしいなって思ったら、抱きしめた。抱きしめて、そのお兄さんを受け止めて、そのまま優しいキスをする。
電話の音がして、目を開くとそこにはあたしだけがいた。
「…もしもし」