夜空に見るは灰色の瞳
「……いや、だからね、三永ちゃん」

「わかってますよー。叶井さんは、ツンデレなんですもんね」

「……いや、だから」

「やっぱり二人っきりだと、今とは打って変わってデレる感じなんですか?」

「いや、……ちょっと待って、何を言ってるの」


三永ちゃんは、私に向けていた笑顔を大路くんの方に移動させて「どうなんでしょうか、大路さん」と楽しそうに問いかける。

私も、三永ちゃんから大路くんへと勢いよく視線を動かすと、一瞬だけ大路くんと目が合った。
けれどその視線は絡まったのも束の間、すぐに三永ちゃんの方を向く。

その顔に浮かぶのは、こちらも楽しそうな笑み。


「二人っきりの時の叶井は――」


その喋り出しと笑顔に嫌な予感しかしなかった私は、咄嗟に大路くんの足を思いっきり踏み付けた。

いった!!という声が店内に響き、私達のテーブルはまたしても視線を集めることになってしまったけれど、おかげでこの話はここでうやむやに流れた。





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