夜空に見るは灰色の瞳
「そうですかね。鏡から出てくるのって、魔法使いっぽくないですか?」

「鏡から出てくるってところだけならぽいですけど、洗面台をまたいでる姿はただの泥棒です」


最早、この男に心を読まれようが感じ取られようが突っ込むまいと決めた。
何しろ自分では制御出来ないと言うのだから、言うだけ無駄だ。


「叶井さんって、往生際が悪いかと思ったら物分かりがよかったりして、よくわかりませんね」

「最後まで抗いはしますけど、一旦信じることにしたら、あとはもうなるようになれというやつです」

「自暴自棄ってことですか?」

「違います」


どう考えても違うだろう。


「違うんですか。まあとりあえず、もっとスマートな登場がお望みなら、全身鏡を置いてくだされば解決しますよ。出しましょうか?」

「結構です。って、前にも言いましたよね」

「鏡としては欲しいけど、通路にされるのは嫌なんでしたっけ」


そこまでハッキリわかっていて、よくもう一度提案出来たな。
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