夜空に見るは灰色の瞳
「気が変わっているかもしれないと思いまして。あれ、叶井さん。使わないんですか?」


くるっと背を向けて洗面所を出ると、男が後ろをついて来ながら問いかける。


「後でいいです」


既に一度スッピンを見られているので今更という気もするが、まあ見られないに越したことはない。そこまで気を許していると思われるのも癪だし。


「そうだ、叶井さん。僕、今日は叶井さんがフライパンの他にもう一つ欲しがっていた新しいマットレスを差し上げようと思っているんですけど、寝室に入ってもいいですか?」

「……いいわけないでしょ。確かに欲しいって言いましたけど、その件についてはもう大丈夫ですから」

「新しいのを買ったんですか?」

「……いや、買ってはないですけど」

「それは、大丈夫とは言いません。任せてください。今回は一から作るのではなく、今ある物を新しくしようと思っているんですけど、古い物を新しくする魔法は得意なんです!」


得意とか不得意とかそういう話ではないし、なぜそんなに楽しげなんだ。
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