日常(仮)
|新しい季節

幸せな時間はあっという間に過ぎていき、私たちは高校生になった。

「隼人!はやくしないと遅刻するよ」

「おー。」

隼人とは同じ高校に行けた。
もうあの頃の私とは違う。一人で殻に閉じこもることもなくなったし、人付き合いもうまくなったように感じる。

一つ大きく変わったことと言えば…

「あ、今日撮影あるから帰りはべつな」

「今日も撮影あるんだ。了解!」

隼人が芸能界にはいったこと。
中学生になったくらいの時にスカウトされてはいった世界。
最初は隼人が雑誌に載ってたりすることに驚いたけど、今ではテレビに出てても驚かない。確かに元からカッコよかったし、芸能界にはいってからますますカッコよくなったと思う。

今でも、そばにいることがたまに信じられなくなる。

「残念だね、こころ。しょうがないから、私が迎えに行ってあげるね」

ニヤニヤしながら寄ってくるていら。

「なに、ていら。しょうがないって言うけど、いつも隼人いてもくるじゃん」

学校に行くようになってから、ていらは朝と帰りの登下校の時間は私と一緒。
学校の友達がいる間は姿を見せないけど、一人か隼人と二人の時はいつも通り。

「ほらほら、遅刻するよ」 

時計を見るといつもの出発の時間を過ぎていた。

「行ってきます…!」

慌てて出発した。

学校近くまで来ると生徒の数が増えてくる。
あっちこっちでヒソヒソ聞こえてくる。

「あ、隼人くんだよ」
「やっぱりかっこいいねえ」

私はいつまでこうして隼人の隣を並んで歩けるんだろう。
たまに、そう考える。
隼人がいる世界にはきれいなモデルさんや女優さんがたくさんいる。
いつか、隼人の隣は誰かに譲らなきゃいけなくなるんだよね。
そのいつかがくるまで、、、私は隼人の隣にいたいなあ。

「何ぼさーっとしてんだよ」

「別に。」

「ふーん。」

そんな素直じゃない会話をしながら、私たちはそれぞれの教室に向かった。
もっと素直に話せればいいのにって自分でも思うけど…、うまく出来ないから苦労するんだよね。

「心愛!おはよう」

ショートカットが似合う私の友達。
冬野あかり。

「おはよう」

「今日も安定だね、お二人さん♡」

ニコニコしながらそう言う。

「しょうがないでしょ、来るところが同じなんだから」

「本当に素直じゃないなあ。隼人くんの隣は心愛で安定って感じするのに」

あかりの言葉に少しだけ嬉しくなる自分がいる。
隼人のとなりが安定ってやつ。

「心愛、感情が顔に出まくってるよ」

「あらら」

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