日常(仮)
ていらと一緒に職員室に向かう。
「こころ、あんまり期待させるようなこと言っちゃだめだよ。」
ていらにそう言われた。
「どういう意味?」
「あの子、お母さんに会えるかもって思うじゃん。期待させて会えないのって残酷だよ。」
「それは、確かに悲しいけどさあ、、、。お母さんと一緒に保護してもらえばよくない?なんで離れる必要があるの?」
お互いが大切なら離れる必要なんてないと思う。
どうして一緒にいちゃいけないの?
「こころ、綺麗な部分だけ見るのは違うよ。現実をちゃんと見ないといけない。」
ていらの言うことがよくわからなかった。
あの頃のことを思い出す。ていらと引き離されそうになったあの日。
私たちは、不思議な現象によって離れずにすんだ。
あの子には、その現象が起こらないだけ。
「ですから、今の状態では涼くんを帰すことはできません。」
先生の力の入った声が聞こえてきた。誰かと電話してるみたい。
冷静に振る舞いつつも、少し怒っているような感じの声。
「涼くんて、あの子のことかな?」
「ぽいね、」
電話が終わるのを、ていらと静かに待ってた。
なんとなく、ていらがさっき言ってた残酷な結果になることが想像できてた。
「あれ、心愛ちゃんおかえり。」
電話が終わると、職員の先生は私の存在に気づいた。
さっき電話している時とは違って、いつもの柔らかい雰囲気。
「あの子涼くんって言うんですか?電話ちょっとだけ聞いちゃいました。」
「古川涼くんよ。電話の内容、他の子たちには内緒にしてね。」
人差し指を口元で”シー”というポーズをする先生。
「教室に行ってきたけど、涼くんお母さんのこと心配してました。涼君のお母さんて今どうしてるんですか?」
「んー。涼くんのお母さんは、涼くんも住んでたお家にいるよ。」
「涼くんは、お母さんに会えないんですか?」
「今は、会えない。」
具体的な内容は話したくなさそうにしていた先生が「会えない」という言葉だけはハッキリと言い切った。
「どうしてですか?」
「今は一緒にいるべきじゃないから、かな。」
「涼くんのお母さんは涼くんに会いたくないの?」
「涼を返してって何回も電話が来てるの。だから、会いたくない訳じゃないんだよ。」
「涼君もお母さんも会いたいのに、どうして引き離す必要があるんですか?」
「、、、心愛ちゃん。あまり詳しいことは教えられないの。けど、今、涼君はここにいた方がいいと思うんだ。涼君が馴染めるように手伝ってほしい。」
「、、、はい。」
私はそれだけ言って、職員室から離れた。
「こころ、」
「わかんないよ。お互い会いたいのに、なんで引き離す必要があるの?」