こんぺいとうびより
その瞬間、静来は素早くソファの上に立ち上がり、浩斗の頭の上すれすれで回し蹴りをして、真っ白なチュールスカートがふんわりと宙を舞った。

「・・・う、お・・・久しぶりだな、空手。しかもスカートで・・・。」

「・・・ごめんなさい。つい、防衛本能が・・・。」

静来は急いで髪や服を整えながら恥ずかしそうに言う。

「・・・あのさ、俺の後に付き合った彼氏達の前でそれやった?」

「・・・やってないけど?」

「君、無意識に猫を被ってたというか、本当の姿を見せてなかったんじゃないか?本当の静来は完璧なんかじゃなくて、泣き虫でさみしがり屋なのに。彼らも最初は君の表面的なところに惹かれて付き合ったけど、中身まで隙がなく完璧で、(もろ)いところがなくてそれに疲れてしまったというか・・・。」

「・・・。」

心臓がドクン、となる。

───確かに彼らの前で私は、仕事でのよそ行きの私とあまり変わらなかったかもしれない。どうしてかしら。ちゃんと好きだったはずなのに。

「それに、時々凶暴だしね。」

無言で考え込んでしまった静来の気持ちが和らぐように、浩斗はいたずらっぽく微笑みながら言った。

「そうね。そんなこと言うのはきっとあなただけね。私のこと静来(しずく)って呼ぶのもそうだし。」

「それは嬉しいな・・・だってそれはつまり・・・。」

───今までの恋人の中で一番心を開いていたのは俺、俺は特別ということになるんじゃないか。

熱を帯び始めた浩斗の視線を避けるように静来は立ち上がった。
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