こんぺいとうびより
「・・・おはようございます。」

「・・・おはよ。」

月曜日の朝。

会社の入るビルのエレベーターホールで璃子と一直は顔を合わせた。

「土曜日はありがとうございました。」

「いや、こっちこそ。」

お互いその会話に今までにはなかった熱を感じてしまい、沈黙が訪れる。

そこに葉吉・彩木夫妻が揃ってこちらに向かってきた。

「おお、おはよう。」
「おはようございます。」

「「おはようございます。」」

夫妻に挨拶されハモって返すと目が合い、二人とも心がわずかにざわめいたが、ちょうどエレベーターが到着したので乗り込んだ。

出口付近に葉吉と彩木、奥に一直と璃子が立ち、エレベーター内は空調の音のみがしていた。

ふと彩木が葉吉の背中に手を伸ばしてついていた糸くずをとると、それに気づいた葉吉は妻と目を合わせ、二人は微笑んだ。

「ふーん。」
「へーえ。」

一直と璃子はニマニマしながら二人を見る。

「な、何だよ!?糸くずとってもらっただけだろ!?」

「そ、そうですよ・・・二人とも同じ顔して何を笑って・・・。」

こちらを振り返り慌てる二人を見て一直が意地悪く言う。

「違いますよ。とった後のお二人のアイコンタクトですよ。」

璃子もうっとりしつつ続く。

「そうそう。熱~いやつです。『やだ、ダーリンったら糸くずなんかつけちゃって。かわいいんだから、はぁと☆』」

「『ありがと、ハニー、愛してるよ、はぁと☆』」

一直も璃子の茶番に付き合い、葉吉夫妻のマネをして見つめ合う。

「そ、そんなこと考えてないし・・・。」

葉吉が焦って二人から顔を背けると一直は満足気にニヤリとする。

「あ~、暑いですね、玉川さん。」

着ているジャケットをバサバサすると璃子も手で顔をあおぐ。

「そうですね~。このエレベーター、空調壊れてるんじゃないですかね~。」

「もう・・・やめてくださいよ・・・。」

彩木が照れて俯くと会社のあるフロアに到着した。
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