キミと、光の彼方へ。
「珠汐奈...こっちへいらっしゃい」


母が私を呼ぶ。

私は母に抱きついた。

無性に母の体温を感じたくなった。

暖かいのに熱を求めてしまうのは、なぜだろう。

分からない、だけど、ほしい。


「お母さん」

「何?」

「お母さんって暖かいね」

「うん。だってお母さん、生きてるもの。しかも、色んな人に愛を持って」

「愛...」

「そう」


お母さんは、幼い頃私にしてくれたように、頭をゆっくりゆっくり撫でてくれた。


「誰かに感謝したり、誰かを強く想ったり、誰かの幸せを願ったり、誰かと一緒にいたり......。人はいつも、誰かとの繋がりを求めてる。そして、そこに愛が溢れていれば、人と人が交ざり合う衝撃で摩擦熱が生まれるの。それが愛の温度、らしいわ」

「らしい?」

「うん。だってそれは潮男(うしお)さんが言っていた言葉だから。今頃、天国でくしゃみしてるわよ、きっと」

「ふふっ。そうかもね」


父のことで笑える日がようやく訪れた。

それは、きっと父が遠くから私達を見守り、愛を送り続けてくれていたからだ。

父はこの世に後悔も未練も残して去っていたとは思う。

だからと言って、後ろめたい気持ちで天国で暮らしているとも思えない。

父なら笑ってる。

歌を歌っている。

だから、私も前を向くよ。

歌は...遠慮するけど、でも、笑うよ。

私の周りの人達の幸せのために。

そして、自分のために。


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