キミと、光の彼方へ。
「あのさ、桑嶋さん」

「何?」

「HR始めますよ~」


碧海くんに話しかけられたけれど、木原先生の言葉に遮られた。


「では、出席取りまーす。まずは、碧海くん」

「はいっ!」


返事をするやいなやペンを持って日記帳くらいの大きさのノートに何かを書いている。


「......さん」


そして、それをビリビリと破る。


「もしもーし、桑嶋さん?」

「あっ...はいっ!」

「ぼーっとしていないで下さいね」

「すみません...」


完全に先生の声聞こえてなかった...。

隣ばっかり気にしてた...。

朝から注意されるなんて最悪だ。

それに...恥ずかしい。

私が思いきり落ち込んでがっくりと肩を落としていると、お隣さんからサッと何かが送られてきた。

机の隅に置かれたのは、先ほどまで見ていた紙だった。

あれは私宛て...だったんだ。

先生にバレないようノートを探すふりをして、机の下で紙を広げた。

そこに書いてあったのは碧海くんの連絡先と、"連絡先聞いてもいい?"というメッセージだった。

スマホの時代になんでこんな原始的なやり方なんだろと思ったけど、これはこれで面白いなんて思ってしまった。

私は"いいよ"と紙に書いて一瞬で返信した。

横目で碧海くんの表情を盗み見る。

碧海くんは、まるでかくれんぼで友達を見つけた時のような無邪気な笑みを浮かべていた。

それを見て私の胸はきゅうっと狭くなる。

不思議なその感覚は生まれて初めてで、自分でも分からない。

ただ、碧海くんを見ていると自分の知らない世界が広がっていくみたいに思える。

海の向こうのそのまた向こう。

そこまで見据えているような、そんな瞳を彼がしているから?

出逢ったばかりなのに、なんでこんなことを思うんだろ?

分かるようで分からない。

私は自分の胸に断続的に押し寄せてくる波に抵抗すべく、ペンを回し始めた。

気を紛らわせたかった。


「はい、じゃあ今日は自己紹介をして、午前中で委員会と教科委員を決め終えましょう!」


先生の鶴の一声で今年1年を占う大事な決めごとが始まった。

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