キミと、光の彼方へ。
―――ドンッ!


「あいたた...」

「いってぇ...」


私はバランスを崩し、床に尻餅をついた。

どうやら誰かと激突したみたい。

新学期早々最悪...。


「マジでごめん。ケガない?」


私の目の前に手が差し出されていた。

海里の手より大きい気がする。

なんだか色んなものを包んでくれそうで、マジックハンドという表現が合う手だなと思った。

私はその手を握る前にひとまず顔を上げた。

すると......目が合った。

彼の瞳は澄んでいて、彼の瞳には私のキョトンとしたブサイクな顔が映り込んでいた。


「はい」

「あっ...すみません...」


私は彼の手のひらに自分の手を重ねた。

彼は軽々と私を起こしてくれた。

身長差は海里より無くて、私の顔が彼の鎖骨くらいで、少し引き寄せられた時にドキッとしてしまった。

そしてそのテンションのまま、私はボソボソとお礼を言った。


「あ...ありがとうございます」

「こっちこそ悪かった。もう一度聞くけどケガないよな?大丈夫だよな?」


すごく心配してくれてるみたいだけど、ただぶつかっただけだし、見回してみてもケガなんてどこにもない。


「大丈夫です」


私がそう言うと、彼はとびきりの笑顔を見せた。


「なら、良かった。んじゃ」


彼は軽く手を挙げて階段を2段飛ばしで駆け上がっていった。

不思議な人だったし、なんだか私も変な気分になった......。

そして、いつの間にか海里を見逃してしまった。

でも、同じクラスにいるんだから大丈夫だ。

いつだって海里を見ていられる。

ふうっと一息ついて落ち着いてから、私は階段を上った。

この朝の惨劇が、彼との出逢いだった。



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