二人の距離~やさしい愛にふれて~
デート
恭吾も繋がれた手をしかっりと握ると緊張していたのがおかしくなり軽い足取りで歩き出す。

「天気が良くてよかったな。」

恭吾の声に理花は振り向き、笑顔で頷く。

「ねぇ、ワンピース、似合わないよね?」

「えっ?なんで?」

「だって前恭ちゃん私がワンピース着てたら変だって言ってたから。」

「あぁ、あれはこんな可愛いのじゃなかっただろ?」

「……あれね、私を殴った人がくれたの。いつもお酒買ってくれる人でね、言うこと聞いてたら沢山買ってくれてたのに。ママから捕まったって聞いた。きっと怒ってるだろうなぁ。」

理花は俯き、足取りがゆっくりになる。

「頭おかしいやつだったんだろ?あんなやつのことなんて心配しなくていいよ。しかもあのワンピースはお前には似合ってなかったし、趣味悪ぃよ。」

「…うん。でも私にとってあのワンピースもお酒も必要なもので…たまに叫び出しそうなくらい堪らなくなったときにあのワンピース着てお酒飲みたくなるの。そして、セックスも…」

恭吾は理花の話を聞いて胸が苦しくなり思わず握った手に力がこもる。

「うん…、今も、今もなる?最近調子いいって聞くけど?」

「あそこの病院ってさ、基本的に私みたいにおかしくなった人ばかりでしょ?夜中とか叫び声がしたり、看護師さんたちが走ってる足音とか聞こえてきて眠れない時があるの。そんなときに喉が熱くなって私も叫び出したくなる…。」

「それでも我慢してるのか?最近そういうのなくなったって先生言ってた。」

「うん…。我慢っていうか、涙は出るし、怖いけど…でも恭ちゃんから貰った人形抱っこしてたら落ち着く気がして…。」
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