二人の距離~やさしい愛にふれて~
「おぉ、可愛い。化粧もしてる?」

恭吾は理花の前に行くと髪を撫でながら顔をのぞき込む。

「う、うん。ママが少しだけ…。でも恭ちゃんはお化粧嫌いでしょ?」

「ハハッ、でも今してるくらいなら可愛くて好きだよ。」

優しい顔で見つめられ、理花は涙がこみ上げてきそうな胸のつまりを感じる。
そんな二人を見ながら草野は小さく笑う。

「今どきの若者は人目を気にせずイチャイチャするから…。見てるこっちが恥ずかしいよ。理花さん、いつも可愛いけどそうやっておしゃれすると見違えるほどキレイですよ。さぁ、行ってらっしゃい。きをつけて。」

みんなから褒められ照れながらも恭吾と二人で病室をでた。
二人の後を追って恵子も外へ出ると青空の下で二人の写真を撮った。

「お父さんと陽斗にも送ってやらんと。きっと喜ぶよ。」

「あっ、じゃあ俺にもお願いします。」

「わかった、じゃあ気をつけて、いってらっしゃい。」

「えっ?ママは行かんの?」

「デートの邪魔はせんよ。来週はママとお出かけしようね。その時は理花にカフェに案内してもらうから。」

恵子は嬉しそうに言うと込み上げてくる涙を押し込めて笑顔で二人を送り出した。

「理花はこの辺詳しい?俺いっつも車で連れてきてもらうから歩くの初めて。」

「うんとね、なんとなくしか…。窓から噴水の公園はよく見てたからたぶんわかるかな。」

以前一緒に出掛けた時よりも数倍も明るい理花は自然と恭吾と手を繋いで公園へと歩き出した。
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