二人の距離~やさしい愛にふれて~
「そんなっ・・・・・・。」

恭吾は自分が考えてもいなかった事実にしばらく何も言えなかった。
恭吾にとって昔の理花の姿は想像がつかなかった。やせ細ってお酒を飲んで、夜中にボロボロになって帰ってくる理花しか知らないのだ。

「そっか、何にそんな苦しんでるんだろうって思ってたんですよ。男の俺が救えることじゃなかったんだ…。」

「俺も男やしなぁ。でも元の理花にってまでは思ってないけど笑えるくらいには回復させてみせるよ。理花は被害者なのに…このままなんてかわいそすぎる…。」

少し涙ぐみながら理花の兄はスマホを取り出し恭吾に電話を掛けた。
着信を確認した恭吾は登録しようとして手を止めた。

「あの、名前、聞いてもいいですか?」

「あぁ、長谷川陽斗…太陽の陽と北斗七星の斗ではると。」

「ありがとうございます。俺は芹沢恭吾です。」

「うん、警察から教えてもらった。俺さ、今日の夜にはもう帰るんよ。いるもんだけあっちに送ってあとは業者に全部処分してもらうように頼んどるんよ。なにか理花が大切にしとったもんとかないかな?」

恭吾は部屋を見渡すも何もわからず、頭を横に振った。

「俺…何も知らないんです。ただいっつもここに座ってる理花しか…。俺がこの机で勉強してるのをじっと見てるだけだったから…。」

「そっか、ありがとう。この箱は絶対に理花に渡す。また本当に連絡してもいいか?」

「はい。もし、叶うなら俺も笑ってる理花が見たいです。」
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