冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
仲良くなって、年長者としてふたりを見守りたい。大切にしたい。

そう思うのは、鶴山さんへの恩義からだけではない。
櫻衣姉弟と末永く続く温かい関係性を、夢に見ていたからだ。

だが当日の早朝。澪が昨夜遅くから高熱を出して寝込んでいるので、申し訳ないが今回はパーティーを中止にさせてほしいと連絡がきた。

『それじゃあ……お見舞いに行っても構いませんか』

普段の自分であれば『わかりました』と聞き分けの良い返事をし、櫻衣家を訪問しようなどと考えなかっただろう。
しかし、その日の俺はどうかしていた。

……鶴山さんは〝孫〟たちが一堂に会するのを楽しみにしていたし、こちらにも姉弟に用意していたクリスマスプレゼントがある。何より、澪が心配だ。

そんな言い訳じみた免罪符を盾に、俺はクリスマスプレゼントとは別にお見舞いの品を持って櫻衣本家の洋館に向かった。

部屋に通されると、澪はあの日の母のように、弱々しくベッドで過ごしていた。

『お見舞いありがとうございます。ベッドからで、ごめんなさい』

『いいや、どうか楽な姿勢で』
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