冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
自己紹介をしてからお見舞いの品に花束を持ってきたと伝えると、澪は『わぁ綺麗』と高熱で潤む瞳を輝かせる。

『花束をもらうのって初めて。嬉しいです、このお花は菊かなぁ』

『ああ、洋菊なんだ。俺の母も好んでいて……その、元気を願う花だと』

洋菊が持つ花言葉は〝朗らかさと元気〟それから〝貴方は素晴らしい友人〟。もちろん他にもあるが、彼女にはこのふたつが最適だろう。

……喜んでもらえて、ほっとした。
俺はわずかに目元を緩めて、大輪が咲き誇る白い洋菊の花束を彼女に手渡す。

すると、彼女は俺の手に指先が触れた途端、『きゃっ』と弾かれたようにその手を引っ込めた。

『す、すまない。俺の手は、人よりも冷たくて』

『えっと。こちらこそ、ごめんなさい。ちょっと驚いただけなの。でも……お兄さまの手、冷たくって気持ちいい。私の手は熱のせいで凄く熱いから』

彼女は離した手を再び伸ばす。
そして何を思ったのか、氷のような俺の手を包むようにして両手を重ねた。

『……あの。これは一体、どういう状況なんだろうか』
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