冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
『そうかい。これが、君たちの縁が交わる最後の機会だというのに』
『……お気遣い、感謝いたします』
その一週間後――。俺の恩人、櫻衣鶴山は急逝した。
葬儀が終わり四十九日を経たある日、俺はあのクリスマスから初めて櫻衣本家の敷居を跨いだ。
なんでも、鶴山さんの遺言状に俺へ万年筆をと書いてあったらしいのだ。
それは普段彼が大事な契約などの際に使っていたもの。随分年季が入っているが、万年筆の老舗高級メーカーでオーダーしたというそれは、まだまだ現役である。
懐かしいリビングルームではなく初めて通された応接間でソファに座っていた俺は、思いも掛けず手にした鶴山さんの形見に、感傷的になった。
俺を招待した広海さんは疲れを見せぬように穏やかな笑顔を作る。
彼を見れば、会長亡き今、櫻衣商事が混乱しているのが手に取るようにわかる。
この場で申し出るべきか否かと逡巡したが、不安定な足場に立ち続けるよりはマシだろう。
そう考え、俺は鶴山さんと最期に交わした約束を遂げるために、吸収合併計画の話を持ち出した。
『……お気遣い、感謝いたします』
その一週間後――。俺の恩人、櫻衣鶴山は急逝した。
葬儀が終わり四十九日を経たある日、俺はあのクリスマスから初めて櫻衣本家の敷居を跨いだ。
なんでも、鶴山さんの遺言状に俺へ万年筆をと書いてあったらしいのだ。
それは普段彼が大事な契約などの際に使っていたもの。随分年季が入っているが、万年筆の老舗高級メーカーでオーダーしたというそれは、まだまだ現役である。
懐かしいリビングルームではなく初めて通された応接間でソファに座っていた俺は、思いも掛けず手にした鶴山さんの形見に、感傷的になった。
俺を招待した広海さんは疲れを見せぬように穏やかな笑顔を作る。
彼を見れば、会長亡き今、櫻衣商事が混乱しているのが手に取るようにわかる。
この場で申し出るべきか否かと逡巡したが、不安定な足場に立ち続けるよりはマシだろう。
そう考え、俺は鶴山さんと最期に交わした約束を遂げるために、吸収合併計画の話を持ち出した。