冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす

そんな矢先、櫻衣商事の会長を務めていた祖父が急逝した。

享年は八十二歳。急な心臓発作で倒れて入院中だった祖父の最期は、柔らかな笑みを浮かべて眠るようだった。
きっと、数年前に亡くなった祖母が迎えに来てくれていたのかもしれない。

大好きな祖父が急逝したショックで食事も喉を通らない状態だったが、会長が急逝して混乱に陥った櫻衣商事を支えるために、仕事は休まずにこなした。

そうして、葬儀が滞りなく行われた数日後。
あらかじめ用意されていた遺言状に則り、遺産は円満に相続されることに。その中には、なんと孫の私にまで遺言と相続品があった。

思いがけず、お祖父さまとの思い出の品を頂けるなんて、とても嬉しい。祖父母との思い出を大切に、これからも懸命に生きていこう。

そう、思っていたのに――。


遺産として渡されたものは、なんと櫻衣商事が発行している〝十億円の株式〟だった。


【澪。幸せになりなさい】

思い出の欠片もない遺品と、短すぎる遺言。

そこからは、どうやっても大好きな祖父の心を酌むことができず、私は泣き崩れるしかなかった。

東京証券取引所の市場第一部に株式を公開している櫻衣商事は、各種証券取引所で株式を売買できる。
櫻衣家は発行株数のうちの三〇パーセントを保有しており、その総額は百億円。
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