冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
「んん……っ」

彼の前髪がさらさらと肌を撫でるだけで変な声が出そうになって、私は慌てて口元を押さえる。

……どうしちゃったの? 宗鷹さん、まるで狼に豹変したみたい……っ。

昨夜までの彼とは打って変わって、愛に飢えた獰猛な獣のような姿に、ドキドキと心臓がの鼓動が激しくなる。
心の奥底で密やかに色づいていた蕾に触れられ、胸がいっぱいになって、たまらない。

彼はいつの間にか私の体の上に覆いかぶさり、逃げ場をなくすように私の両腕を片手てシーツの海に沈めると、心臓の上に優しく長い指先を這わされる。

まるで捕食される兎のようにふるふると震える私を、あの凍てつく氷のような鋭い冷然とした瞳が、すうっと射抜いた。

「だが、もう我慢の限界なんだ。――君の心も体も、すべて俺のものにしたい」

私を見下ろす琥珀色の双眸の奥は、あの激情にも似た熱を帯びている。

氷のように冷たいと思っていたそれは、触れたら火傷してしまうほどの独占欲や熱情を貪欲に孕んでいた。
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