冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
それに『あの件』ってなんだったんだろう? 記憶を色々と辿ってみるが、まったく思い出せない。
とにもかくにも。愛なき政略結婚を望んだ彼が、どうして今さら私を溺愛して片時も離さないのか……その心はわからないが、際限なく与えられる甘い誘惑に陥落しているのは確かだ。
「……あ、痛っ!」
唐突に走った痛みに驚き、視線を下げる。
硬いかぼちゃを切るために右手に持っていた包丁が、つい考え事に集中し過ぎていたせいで、添えていた左手の人差し指をざっくりと切っていた。
「わわわっ。血、血が出てる。じゃなくてかぼちゃ!」
慌ただしくキッチンをパタパタと走り回りながら、なんとか止血する。
「び、びっくりしたぁ。こんなつもりじゃなかったのに」
そう。こんなつもりじゃなかったのだが、私の左手の指先は今日だけで絆創膏まみれになっている。
結婚してから一ヶ月目にして、ついに私は料理の分担をもぎ取った。
今まで伊達に料理本を読み込んでいたわけではない。
とにもかくにも。愛なき政略結婚を望んだ彼が、どうして今さら私を溺愛して片時も離さないのか……その心はわからないが、際限なく与えられる甘い誘惑に陥落しているのは確かだ。
「……あ、痛っ!」
唐突に走った痛みに驚き、視線を下げる。
硬いかぼちゃを切るために右手に持っていた包丁が、つい考え事に集中し過ぎていたせいで、添えていた左手の人差し指をざっくりと切っていた。
「わわわっ。血、血が出てる。じゃなくてかぼちゃ!」
慌ただしくキッチンをパタパタと走り回りながら、なんとか止血する。
「び、びっくりしたぁ。こんなつもりじゃなかったのに」
そう。こんなつもりじゃなかったのだが、私の左手の指先は今日だけで絆創膏まみれになっている。
結婚してから一ヶ月目にして、ついに私は料理の分担をもぎ取った。
今まで伊達に料理本を読み込んでいたわけではない。