冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
その言葉しか思い浮かばない。思考回路は、すでにパニック状態だ。
知識不足と経験の無さ、加えて生命線であるスマートフォンが使えない状況で、私の呼吸は次第に浅くなる。
徐々に大きくなる心音が、鼓膜の内側で警鐘のように鳴り響き始めた。
「なんだか、胸が苦しい……っ」
そう認識した時には、はあっはあっと息が上がり、喉が詰まるような感覚に陥った。
霧がかる思考の中、頭がぐらぐらとして重くなる。
そんな時――玄関ドアの向こう側から、物音がした。
革靴の音だ。そして、僅かではあったが、重厚な玄関扉を閉める音が聞こえる。
……きっと、お隣さんが帰宅したんだ。
湊征が引っ越してきてから何度か折りを見て挨拶しに伺ったものの、いつも留守だったため、『お隣は住んでいないんじゃないかな?』と話していたが、どうやらすれ違っていただけのようだ。
よかった、お隣に誰かいる……っ。
混乱の最中、安心感でいっぱいになった私は、暗闇に手を伸ばして玄関扉の鍵を開く。
挨拶を交わしたこともない、隣人なんて怪しまれて同然。もしかしたら、突然の訪問者に応対すらしてくれないかもしれない。
だけど今は、息も胸も心底苦しい。
エレベーターに乗り込み、一階にあるコンシェルジュデスクへ行けるような余裕もなくて、私は苦しい心臓を抑えながら、フロアへ出た。
知識不足と経験の無さ、加えて生命線であるスマートフォンが使えない状況で、私の呼吸は次第に浅くなる。
徐々に大きくなる心音が、鼓膜の内側で警鐘のように鳴り響き始めた。
「なんだか、胸が苦しい……っ」
そう認識した時には、はあっはあっと息が上がり、喉が詰まるような感覚に陥った。
霧がかる思考の中、頭がぐらぐらとして重くなる。
そんな時――玄関ドアの向こう側から、物音がした。
革靴の音だ。そして、僅かではあったが、重厚な玄関扉を閉める音が聞こえる。
……きっと、お隣さんが帰宅したんだ。
湊征が引っ越してきてから何度か折りを見て挨拶しに伺ったものの、いつも留守だったため、『お隣は住んでいないんじゃないかな?』と話していたが、どうやらすれ違っていただけのようだ。
よかった、お隣に誰かいる……っ。
混乱の最中、安心感でいっぱいになった私は、暗闇に手を伸ばして玄関扉の鍵を開く。
挨拶を交わしたこともない、隣人なんて怪しまれて同然。もしかしたら、突然の訪問者に応対すらしてくれないかもしれない。
だけど今は、息も胸も心底苦しい。
エレベーターに乗り込み、一階にあるコンシェルジュデスクへ行けるような余裕もなくて、私は苦しい心臓を抑えながら、フロアへ出た。