冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
不安定な足取りでお隣へ向かい、震える指先で玄関チャイムを押す。
湊征の家と同じく表札は出ていない。先ほど聞こえた音が嘘だったように人の気配は感じられず、無機質なフロアに緊張が走る。
どうか、どなたか、出てきてくださいますように……!
そう願った瞬間、ガチャリと重厚な玄関扉が開かれた。
「はい。どうされましたか」
頭上から降ってきたのは、低く耳触りの良い男性の声。
「突然、すみません。私は、隣の……っ」
ああ、良かった! と神に縋るように視線を上げると、扉を開いていた男性がわずかに目を見張る。
「……どうして、ここに君が」
私も、彼を知っている。
艶やかに整えられた藍墨色の髪に、吸い込まれそうなほど透き通った琥珀色の瞳。
長い睫毛に縁取られた二重瞼の目元は鋭く、すっと通った高い鼻梁に、形の良い唇という端麗な美貌は一度見たら忘れられないだろう。
百八十センチを超える体躯はすらりと細身ながら胸板は程よく逞しく、ウエストラインは美しく引き締まっていて、大人の色香を感じずにはいられない。
誰もを惑わせるような妖艶さを醸しながらも、まるで皇帝のごとく凛然とした雰囲気を持ち合わせている姿は、なんだか冷酷そうで近寄り難い印象を覚える。
彼こそが、菊永ホールディングスの御曹司――菊永宗鷹さんだ。
湊征の家と同じく表札は出ていない。先ほど聞こえた音が嘘だったように人の気配は感じられず、無機質なフロアに緊張が走る。
どうか、どなたか、出てきてくださいますように……!
そう願った瞬間、ガチャリと重厚な玄関扉が開かれた。
「はい。どうされましたか」
頭上から降ってきたのは、低く耳触りの良い男性の声。
「突然、すみません。私は、隣の……っ」
ああ、良かった! と神に縋るように視線を上げると、扉を開いていた男性がわずかに目を見張る。
「……どうして、ここに君が」
私も、彼を知っている。
艶やかに整えられた藍墨色の髪に、吸い込まれそうなほど透き通った琥珀色の瞳。
長い睫毛に縁取られた二重瞼の目元は鋭く、すっと通った高い鼻梁に、形の良い唇という端麗な美貌は一度見たら忘れられないだろう。
百八十センチを超える体躯はすらりと細身ながら胸板は程よく逞しく、ウエストラインは美しく引き締まっていて、大人の色香を感じずにはいられない。
誰もを惑わせるような妖艶さを醸しながらも、まるで皇帝のごとく凛然とした雰囲気を持ち合わせている姿は、なんだか冷酷そうで近寄り難い印象を覚える。
彼こそが、菊永ホールディングスの御曹司――菊永宗鷹さんだ。