冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
自分の不甲斐なさに堪えられなくなって、歪な愛想笑いを浮かべながら俯いた。

「……そんなことで悩んでいたのか。俺がもっと早く、君の望むすべてを用意してやれると言っていたら、君が悩む必要も、こうして倒れることもなかったのかもしれないな」

彼はそっと、自然な動作でこちらへ手を伸ばす。
無骨な手のひらは、まるで繊細な硝子細工に触れるみたいな手つきで、慎重に、優しく私の頬に触れた。

驚きのまま彼を見つめると、琥珀色の瞳がゆっくりと艶やかに細められる。

「俺なら、君の悩みを解決してやれる」

どこか甘さを孕んだ声音で告げられた言葉に、私は密かに息を呑む。

なぜだか彼の視線に、手のひらの温度に、胸の奥がきゅうっと締め付けられる。
彼に触れられた部分が熱くて、痺れているみたいだった。

いてもたってもいられないような気分を誤魔化すために、私は強がって、宗鷹さんをむっと睨みつける。

「それは一体、どういう意味でしょうか? あなたは、私のことを何も知らないのに」

疑問を抱くのも無理はないだろう。
だって、互いに名前と顔しか知らないような仲なのだ。

しかし、宗鷹さんは自嘲するような笑みを口元に浮かべながら、「知っているさ。君が想像するよりも、遥かに多くをな」と口にした。
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