冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
卵もふんわりとしていて、甘い気がする。
こんなに美味しいおかゆを食べたのは初めてだ。

「お嬢様のお口に合ったようでなにより。他人に振る舞ったことはないが、料理は昔からしていて得意なんだ」

「得意のレベルを超えてます。もう完全に、プロの料理人並みの腕前ですよ」

そうだろうか、と彼は少しはにかみながらも照れくさそうに微笑む。
わあ……。宗鷹さんって、こんな表情もできるんだ。

仮面を貼り付けたような上辺だけの笑顔ではない。それは、彼が私に初めて見せてくれた心からの笑顔なのだと、瞬時に理解できた。

なぜだか、くすぐったくて、居ても立っても居られない。
面映ゆい気持ちが心の奥底まで広がって、とくり、とくりと、心臓の鼓動を早める。

政略結婚は家同士の形式的な結びつきだけで、心の伴わないものだと思っていた。けれど、もしかすると、そうではなくて……。
お互いを思いやれる心温まるような関係性は、自分たち次第で築けるのかもしれない。

そう思えて、胸の奥がきゅうっと甘く痛んだ。



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